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訪問看護の未来

連載コラム2:訪問看護ステーションと診療報酬改定②~機能強化型訪問看護ステーションと2016年診療報酬改定~

■看取り要件の緩和で機能強化型を増大

本年2月10日の中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、2016年診療報酬改定の答申が行われた。この答申の中から訪問看護事業所の次期報酬改定に関する項目について見ていこう。

さて前回のコラムでも述べたように、機能強化型訪問看護ステーション数は訪問看護ステーション全体の4%とまだまだ少ない。この理由は機能強化型訪問看護ステーションの現在の施設基準のハードルが高いことにもあるようだ。

では施設基準の中でどの項目のハードルが高いのだろうか。訪問看護事業所が機能強化型を届けることができない理由は以下の3点である。


  ①勤換算看護師数、5人以上、7人以上を満たすことができない。
  ②看取り件数を満たすことができない。
  ③別表7の重症利用者数の要件を満たすことができない。

そこで2016年の診療報酬改定では看取り件数のハードルが緩和される。現在、ターミナルケアを行っていても、在宅がん医療総合診療料を算定している利用者数は看取り件数に含まれていない。それを見直し、そうした利用者を年間看取り件数に加えることになった。

在宅がん医療総合診療料は、進行がんの利用者に週に訪問診療1回以上を含めて4回以上の訪問を計画的に行った場合、検査や治療等を包括で算定できる。この在宅がん医療総合診療料の利用者数を加えた20件以上の看取り件数が新要件となった。これによって達成がより容易になった。

■増える小児の受け入れ、要件に追加

次に医療ニーズの高い小児の受け入れを要件に加えてはどうかという議論がされた。

現在、病院の新生児特定集中治療室(NICU)の最大の課題は長期入院児の増加である。1年以上の長期入院児が年を経るごとに増えている(図7)。201602_2_01.png

このためNICUの病床利用率が90%超えの総合周産期母子医療センターが7割に達している。母体搬送および新生児搬送が受けられなかった理由を病院に尋ねると8割から9割近くのセンターが「NICUの満床」と回答している。

一方、こうした事態と平行して、訪問看護ステーションにおける9歳以下の児の在宅での受け入れ数も増加している。2001年と2017年を比べるとその受け入れ数は9.5倍にも達している。

しかし小児を受け入れてくれる訪問看護ステーションは、高齢者やがん末期、神経難病等を受け入れてくれる訪問看護ステーションに比較して圧倒的に少ない。このため一部の訪問看護ステーションに小児の利用者が集中する事態となっている。

こうした訪問看護ステーションでは特に人工呼吸器を装着している重症児を扱うことが多い。このため人工呼吸器管理等を初めとした24時間365日ケアが多く、一箇所の訪問看護ステーションだけでケアの全てをカバーしきれない場合も多いことから、複数の訪問看護ステーションが一人の重症児に係るケースも多い。

厚労省はこうした状況を解決するため、機能強化型訪問看護ステーションの施設要件に、看取り件数に加えて超重症児ら小児の24時間受け入れ体制も含めることとした。具体的には「ターミナルケア件数を合計した数が年に 15以上、かつ、超・準超重症児の利用者数を合計した数が常時4人以上」が新たな要件となる。

■医療機関併設と地域の訪問看護の連携促進

また前回のコラムでも述べたように、病院・診療所に併設した訪問看護の減少が著しい。前回のコラムの図1でみると2002年に3874あった医療機関併設型の訪問看護は2015年1617と6割減となっている。これを病院・診療所側から見ると、全医療機関のうち3.8%が医療保険による訪問看護を実施しており、病院に限ると2割が実施している。

訪問看護を実施する病院・診療所のうち、約4割が病院であり、その約3割は主に一般病棟を有する病院である。一般病院における1病院当たりの訪問看護提供者数は1~10人が最も多く、10対1入院基本料を算定している病院に実施割合が高いことも分かっている。

そして病院における訪問看護の利用者の5割はもともと病院に入院していた患者である。このように病院併設型の訪問看護は入院患者の退院後の在宅移行を円滑に行うために有効であるともいえる。

例を挙げると、ある病院では小児の在宅移行の際、退院後訪問を病院併設の事業所と地域の事業所の2つの訪問看護ステーションが共同で行うことで、地域の訪問看護師や患者・患者家族の在宅移行の不安を緩和することに役立ったという。また別の病院では、病院併設型の訪問看護ステーションの老人看護専門ナースが地域の訪問看護師やケアマネジャーと共同して認知症患者の在宅移行に当たったという。その際に、在宅支援にふさわしい方法を選択し、関係者の不安の解消にもつながったという。

しかし、現在の診療報酬制度では、入院中に病院訪問看護と地域訪問看護で共同し退院支援を行うことを評価する仕組みはあっても、退院後に両者が共同で在宅療養支援を行うことを評価する仕組みはない。

そこで医療ニーズが高い患者が在宅療養への移行や継続を円滑にできるようにするために、退院支援や訪問看護ステーションとの連携を目的として退院直後の一定期間に入院医療機関から行う訪問指導を評価する必要があるだろう。

今後の在宅医療のニーズの増大に対応するため、病院・診療所からの訪問看護をより評価することになったことも2016年診療報酬改定の要点である。

具体的には病院・診療所からの訪問看護をより評価するために、在宅患者訪問看護・指導料等を充実する。例えば在宅患者訪問看護・指導料は週3日目まで 555点だったものが580点に、週4日目以降655点だったものが680点と手厚くなった。

こうした退院直後の患者の在宅支援が今後の大きな課題となる。

というのも平均在院日数がどんどん短縮し、2015年2月には一般病床の平均在院日数は17.0日となった。東京、神奈川では現在14日台である。このように平均在院日数が短縮するとかつては病棟で診ていた患者を在宅で診るようになる。まだまだ病棟並みの観察や処置が必要なこの退院直後およそ2週間に集中的に介入することが、再入院の防止にもつながる。

この集中的な介入を、医療機関併設型の訪問看護と地域の訪問看護ステーションが共同で行う必要性がますます高まるであろう。

そこで今回の改定では、退院直後に、入院医療機関の看護師等が利用者宅等を訪問し、当該患者又はその家族等退院後に患者の在宅療養支援に当たる者に対して、退院後の在宅における療養上の指導を行った場合の評価を新設することになった。

具体的には「退院後訪問指導料580点(1回につき)」と「訪問看護同行加算20点」が新設された。

■同一日緊急訪問が複数認められるように

先に見たように小児の訪問看護では複数の訪問看護ステーションが係る例が多い。複数訪問看護を利用している3.2%の利用者のうち、小児の割合は大きい。

小児に限ったことではなく、事業所が行う訪問看護のうち、複数事業所による訪問看護の割合は高い。機能強化型訪問看護ステーションでは6割前後、その他の訪問看護ステーションでも5割弱が複数事業所によるものだという。

ただ現行の診療報酬上では、同一日に2箇所目の訪問看護ステーションによる緊急訪問は算定できず、問題とされている(図8)。201602_2_02.png

もっとも緩和ケアや褥瘡ケアの専門研修を受けた看護師と共同する場合には複数訪問看護ステーションからの緊急訪問が同一日でも認められている。

2016年の改定では、この問題を解決するため、医療ニーズが高い患者の場合は、複数の訪問看護ステーションからの同一日の複数訪問を認めることになった。

■地域包括ケアに必須の訪問看護ネットワーク

今回、そして前回のコラムを通じて、訪問看護ステーションに係る2016年の診療報酬改定を考えてみた。

改定によって訪問看護ステーションの数的拡大と機能強化という方向性が前回改定と同様、引き継がれることがご理解いただけたと思う。

病院医療が24時間365日の看護の力がなければ成り立たないのと同様に、地域における在宅医療においてもますます同様の力が求められるようになっている。それは単独の事業所で実現するのではなく、地域に張り巡らした病院、診療所、薬局など多職種とのネットワークを基盤にして広げるべきものであろう。

こうした意味では訪問看護ネットワークの展開が、地域包括ケアシステムの基盤システムにとって必須と言えよう。

次回以降も、2025年の訪問看護師15万人時代を目指して、今後の訪問看護に関する政策提言を主体としてその未来像に迫っていきたい。

参考文献  厚生労働省ホームページ 中央社会保険医療協議会 総会(第312回)資料「在宅医療その4」2015年11月11日 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000103646.html (2015年12月13日閲覧) 中央社会保険医療協議会診療報酬改定案答申「個別改定項目」2016年2月10日 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000111936.html (2016年2月10日閲覧)