訪問看護ステーション ケアーズ

ケアーズパートナー専用ページログイン

訪問看護の未来

連載コラム6:訪問看護ステーションから地域総合ケアステーションへ② ~大規模化を促進する訪問看護ステーションへの支援~

■訪問看護ステーションへの支援で大規模化を促進

前回は米国の巨大訪問看護ステーションの事例を踏まえ、わが国における大規模化、多機能化、高機能化の流れを追ってみた。大規模化の効果ははっきりしており、そのための取り組みも様々に起きていて大規模化の潮流は加速している。

しかし、各訪問看護ステーションの取り組みだけでは、大規模化は容易ではない。これからは訪問看護ステーションの業務を支援する事業も必要だろう。前回お伝えした6割を占める小規模ステーションを支援する体制が必要だ。

国はこうした訪問看護ステーションを支援するため、2009年から3年間、訪問看護支援事業を予算化して行った。

具体的には以下の3支援事業、①報酬請求業務支援、②電話相談業務(コールセンター)支援、③医療材料等供給業務支援等である(図6)。

201604_5_06.png

この訪問看護支援事業は3年間に計30 地域で実施された。そして実施された地域では、訪問看護ステーションの利用者数の増加や訪問回数の増加につながっていたことが明らかになった。以下、この3つの支援事業の概要を見ていこう。

■実際に効果を上げた3つの支援事業

(1)報酬請求業務支援

前回述べたように訪問看護事業は診療報酬、介護報酬がモザイクのように絡み合った複雑な報酬請求となっている。そこで報酬請求業務支援が生まれた。

2009年度に報酬請求業務支援事業を開始した香川県の事例では、広域対応訪問看護ネットワークセンターを県の看護協会内に設置し、センターを拠点として複数の訪問看護ステーションをネットワーク化した。ネットワーク上で請求事務や看護記録、マニュアルなどを共有し、意見交換をも活発化させることで効果を挙げている。

(2)コールセンター事業

訪問看護ステーションでは、利用者や病院、ケアマネジャー等からの相談が発生するが、それぞれのステーションの個別対応となっている。その結果、地域内でもステーションの受け入れ可否の状況や得意分野の情報が共有されず、適切なステーションの紹介もなされていない。小規模ステーションの場合、電話番を置けずに訪問看護の依頼の電話に対応できないという課題も抱える。

そこで電話応対や受け入れ調整、訪問看護の相談窓口などの業務を地域で一本化したコールセンターのようなものが必要となる。

こうした地域で一本化された訪問看護ステーションのコールセンターを設置する支援事業は、実際に大阪府で行われた。この事例では、病院内に滞在型のコールセンターを設置し、地域の訪問看護ステーションに関する情報を一元管理しながらスムーズな退院支援に活かした。地域の情報が集約され、利用者ニーズに合ったステーションを紹介できるようになった。また病院内にコールセンターを設置することで、病院看護師にとっても退院調整や訪問看護等について知ることができ、新規利用者の確保に加えて病院関係者に対する退院支援や訪問看護に関する普及啓発につながったと言う。

(3)医療材料等供給支援事業

医療材料の供給や在庫が在宅医療において問題となっている。

病院に比べて消費の絶対量が少なく、発注や在庫の管理体制が手薄になりがちな訪問看護ステーションでは、「消費量が少ないにも関わらず箱単位で購入せざるを得ないため、使用期限が過ぎてしまうなどの無駄が生じる」、「利用者にスムーズに医療材料等が届かない」、「訪問看護ステーションが医療材料について必要なときに対応できない」等の課題がある。

このため、医療機関や地区薬剤師会、薬局、卸等と連携し、円滑に運用できる医療材料等の供給ネットワークの構築が必要だと言える。

特に最近は病院の平均在院日数が短くなり、退院日も急に決まることが多い中で、患者は様々な医療機器や医療材料を必要とする状態で在宅に戻ってくる。退院した初日から入院で使用していた医療材料や医療機器が在宅にそろっていなければならないことも多い。在宅で用いる医療材料や医療機器の供給体制を整えることが、病院から在宅への円滑な移行のカギとなることも多い。在宅向けに医療材料や医療機器を即座に供給してくれる支援ビジネスがあったら便利だ。

この他、訪問看護ステーションの開業支援ビジネスも重要だろう。大規模化の必要性に合わせて、序盤から営業スタッフや報酬業務支援スタッフを備えた大規模が前提の開業モデルへの支援や、小規模訪問看護ステーションの経営統合に関する支援などもこれからは必要になるだろう。

■訪問看護師の新たな活躍の機会を切り開くPOCT

さて、現在、在宅医療での活用の機運が高まっているPOCTをご存知だろうか?

POCT(ポクト)とはポイント・オブ・ケア・テスティング(point of care testing)の略で、日本語では「臨床現場即時検査」と訳される。

最近、検査機器の小型化、軽量化、高性能化によってPOCTの検査範囲が急速に拡大している。在宅患者においても、血算はもとより血糖値やHbAlc、炎症マーカーのCRP、電解質、心不全マーカーのBNPなどもPOCTを用いて簡単に測定できる時代だ。

在宅医療におけるPOCTについてアンケート調査を行った畑吉節末氏(神戸常盤大学保健科学部看護学科)の研究「在宅医療におけるポイント・オブ・ケア・テスティングの現状と有用性の検討」から、その活用の機運の高まりを見ていこう。アンケート調査は2010年に全国の訪問看護ステーションを対象に行ったもので、現場からは「POCTがあればこんなことが防げた」という声が、以下のように多数寄せられた。

  • ・「遷延性意識障害の患者さんで、胃ろうの患者さんが、水分・栄養管理がされているのにもかかわらず痩せや脱水症状で日に日に状態が悪くなってきた。結局、救急搬送された病院で高血糖であることが分かった。」
  • ・「お年寄りで熱はなく風邪症状だけの方が翌日、救急搬送された先で重症肺炎が見つかって5日後に亡くなってしまった。血液検査をしていれば無症候性肺炎を見抜くことができたのでは?」
  • ・「食欲低下のみで本人の自覚症状もなかったが、結果的に入院して調べたらCRPが20もあった。」
  • ・「状態から脱水や電解質異常を疑ったが、客観的な検査データがあればもっと適切な処置ができたと思う。」
  • ・「休日・夜間の主治医との連絡がとれず、緊急時の検査がその場でできれば治療開始も早まったのではと思った。」
  • ・「水中毒で緊急入院した例があった。POCTをしていればもっと早く発見できて入院に至らなくても済んだと思えた。」
  • ・「高Na血症、低Na血症や脱水などが早期に分かれば食事や水分対応だけで入院しなくても済んだと思う。」
  • ・「病院から『とにかく連れて来て・・・』と言われて検査目的で受診し、『この値なら在宅で様子を見る』と言われて、『大変な思いをして病院まで連れていったのに・・・』と思った。『在宅で検査ができれば患者さんにも負担がなかった』のにと思った。」

上記のように訪問看護の現場でのPOCTの必要性の訴えは多い。ではPOCTを在宅医療の中に普及させていくためには、どのような条件が必要だろうか?

まずは医師だけでなく訪問看護師がPOCTを活用できる道を切り開くことが喫緊の課題と言えよう。例えば2014年6月に成立した医療介護総合推進法では看護師の「特定行為」とその研修が法制化された。この特定行為には看護師による臨床検査や画像診断のオーダーとそのアセスメントの項目もあって、在宅におけるPOCTの訪問看護師による活用の道が期待されている。かかりつけ医からの検査指示待ちではなく、かかりつけ医と看護師との間で事前に定めた包括的指示のもとに、訪問看護師が自らの判断でPOCTを活用できるようになることで、診断能力の向上を図りたいものだ。

■おわりに

米国だけでなく日本でも加速している訪問看護事業の大規模化の潮流をご理解いただけただろうか。POCTなどのサポートを受けて大規模化、多職種化、高機能化した訪問看護ステーションがこれからさらに必要となる。

こうした訪問看護ステーションは、その名称も「訪問看護ステーション」から「地域総合ケアステーション」と変えてはどうだろう。病院のナースステーションも、すでにスタッフステーションと名前を変えている時代である。こうして名前も変えた大規模・多職種・高機能化した「総合ケアステーション」が、これからの地域包括ケアシステムの中核を担っていくことになるのは間違いない。

参考文献
川村佐和子ら 平成20年度の厚生労働省老人保健健康増進等事業の調査研究「訪問看護事業の機能集約および基盤強化促進に関する調査研究事業」
畑吉節末氏ら、「在宅医療におけるポイント・オブ・ケア・テスティングの現状と有用性の検討」在宅医療助成一般公募報告書2009年