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訪問看護の未来

連載コラム17:リハビリテーションの未来と訪問看護(前編)

■はじめに

訪問看護ステーションには、看護師以外にリハビリテーション(以下、リハ)を担当する理学療法士(PT)や作業療法士(OT)を配置しているところも多い。平成25年8月時点での介護サービス情報に公表されていた指定訪問看護ステーションの事業所情報を見ると、5,810の訪問看護事業所のうち、およそ半数の2,782事業所に理学療法士や作業療法士が配置されていた。

理学療法士は、身体の基本的な機能回復を支援する役割を持ち、立つ、座る、歩く、食べるといった身体的な日常生活動作を行うためのリハを主に受け持つ。また作業療法士は、仕事や家事などのより機能的な日常生活活動ができるようになることを目標とし、応用動作ができるようにサポートしていくのが役割といえる。

つまり、大雑把な例え方をすれば、怪我や麻痺などで動かなくなった身体を再び動くように、あるいは凝り固まらないようにするのが理学療法士で、もっと細かい手指の動きも含めて日常生活が送れるような訓練をするのが作業療法士と言える。

高齢者の場合、一様に身体機能の低下が発生しやすく、認知症や寝たきりなど日常生活に支障が生じることも多い。まして入院ではなく在宅の場合は、利用者の生活の質の維持または向上が不可欠となる。そういった意味で、在宅で主に高齢者を看る訪問看護では、リハの役割は大きい。

今回は、このように訪問看護との関係が深いリハについて見ていこう。これまでの診療報酬改定・介護報酬改定におけるリハの変遷を振り返りながら、今後のリハの方向性について一緒に考えてみたい。

■米国留学で出会った先進のリハ文化

さて、冒頭から私事にわたって恐縮だが、著者がリハに最初に出会ったのは1987年と88年に家庭医療の留学で訪れたニューヨーク市のブルックリンだった。ブルックリンの下町にあるニューヨーク州立大学のダウンステート・メデイカルセンターの家庭医療学科に留学していたとき、家庭医療学科のレジデントと一緒にブルックリンの在郷軍人病院(VA Hospital)で初めて病院リハの実態を目にすることができた。

米国のリハの発展の歴史は第二次世界大戦の復員軍人障害者60万人のリハなくしては語れない。その中心的な役割を担ったのが在郷軍人病院のリハ部門だった。

当時の日本では、1980年に日本リハビリテーション医学会の専門医制度が始まったばかりで、病院でリハ部門を導入しているところはまだ少なかった。このため初めて見たブルックリンの在郷軍人病院で行われていた病院リハには驚きだった。小柄な女性の理学療法士が、巨体の男性患者にリハを行う様子は、まるでレスリングのトレーナーのように感じられた。

こうした米国のリハの思想や技術が日本にもたらされ、ご存知のとおり、今日の日本では病院におけるリハが日常風景となった。

著者が勤務する国際医療福祉大学の都内の関連病院である国際医療福祉三田病院では理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語療法士(ST)を20数名抱えていて、急性期病院におけるリハに熱心に取り組んでいる。

■日本の急性期リハとADL維持向上等体制加算

ここからは、わが国のリハの現状と課題について見ていこう。リハは急性期、回復期、維持期・生活期といったステージに分けられるため、ステージごとに現状と課題を整理する。診療報酬・介護報酬の最近の改定動向も踏まえながら見ていきたい。

その前に急性期、回復期、維持期・生活期、それぞれのステージにおけるリハビリテーションの役割を図表1で確認してほしい。図表1は脳卒中のケースを元に、リハの場と機能、カバーする保険について、急性期から回復期、維持期・生活期のステージごとに身体機能の状態変化も含めて概観したものだ。

図表1201610_17_01.png

それでは、早速急性期リハについて詳しく見てみよう。急性期リハの最近のトピックスは2014年診療報酬改定で、導入された「ADL維持向上等体制加算25点(患者1人1日)」である。7対1や10対1の急性期病床のリハ専門職を配置したときに評価するこの加算は、以下のようなエビデンスから導入された。

たとえば広島大学病院では脳神経内科・脳神経外科病棟で理学療法士2名を専属で病棟配置し、病棟内リハを行い、病棟カンファレンス等に参加した結果、バーセルインデックスという機能的評価による比較において、入院患者のADL(日常生活動作)が向上し、入院日数の短縮に貢献したという(図表2)。

図表2201610_17_02.png

このように急性期病院における理学療法士の介入による早期からのリハが、高齢者の在宅復帰において期待を集めている。

高齢者の場合、たった2週間の入院でもADL(日常生活動作)の自立に支障をきたして、在宅への復帰がままならなくなることが多いため、入院患者の高齢化は急性期病院の大きな課題となっている。こうした時に病棟における在宅復帰へむけた集中的な病棟リハ訓練を理学療法士が提供できれば、急性期病院から在宅への移行も円滑化すると考えられる。

このような期待から2014年改定から始まった専従理学療法士等の専従1名以上による「ADL維持向上等体制加算」であったが、その算定状況は惨澹たるものだった。一般病棟7対1、10対1の導入された本加算の2014年の7月の実績は、届け出医療機関数で32病院(0.8%)、月当たりの算定回数で0.1%と極めて低い数値となった。

これを受けて2016年改定では「ADL維持向上等体制加算」は25点を80点に増点した。ただ施設基準のハードルも、理学療法士等が専従2名以上か専従1名、専任1名以上と高いものとなっている。これによりどのくらいの算定率になるかが注目される。

急性期はこれからさらなるリハ介入が必要な分野だ。場合によっては「7対1の人員配置の基本要件に看護師とともにリハのセラピストも加えては?」という意見まであるほどだ。

日本のリハの現状と課題を追っている途中で、まだ回復期と維持期・生活期についての話が残っているが、これら2つの説明はまた次回としたい。

回復期リハについてはリハの中でも近年病床が急増したリハであり、それに端を発するアウトカム評価の導入などトピックスの多い分野である。アウトカム評価はまだ日本では馴染みが薄いが、米国などでは訪問看護でも取り入れられている評価手法であるため、今後の制度をイメージする上で重要である。

一方の維持期・生活期リハは、訪問看護や介護分野にもっとも身近なリハであり、訪問看護ステーションのリハとして提供されることの多いものである。

2つのリハが実際に今、どういった状況にあるのか?次回はそれを追いつつ、リハが迎える未来の姿とそこへの訪問看護の係りを見ていこうと思う。