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訪問看護の未来

連載コラム18:リハビリテーションの未来と訪問看護(後編)

■増加が著しい回復期リハ病床

前回は、我が国のリハビリテーション(以下、リハ)の現状と課題を理解するため、まず急性期リハについて詳しく探ってみた。急性期リハにおいて目指されるADL(日常生活動作)の維持向上とそれについての加算の現状を理解した。今回はその続きとして、まずは回復期リハから見ていこう。

最近、回復期リハ病床数の増加が著しい。回復期リハビリテーション入院基本料が創設されたのが2000年、そのときの回復期リハ病床は1,675床であったのが、2014年には71,890床と40倍近くに増えた。また回復期リハの月当り総報酬額も2002年を1とすると、2014年は4.82倍と診療報報酬全体の伸びをはるかに上回る増額がなされている。しかも回復期リハビリテーションにおけるリハ単位は6単位までが包括とされているが、9単位までは必要に応じて認められている。この9単位まで目いっぱい算定する病院の割合も増えていて、回復期リハ全体の2割近くにも及んでいる。

こうした中、回復期リハ病棟における「アウトカム評価」が今回の診療報酬改定の話題となった。

実は回復期リハにアウトカム評価が導入されたのは今回が初めてではない。2008年改定において回復期リハに最初のアウトカム評価が導入された。具体的には「回復期リハビリテーション病棟」において在宅復帰率(60%以上)、回復期リハ病棟における重症患者の入院割合(15%以上)、入院中に重症患者の日常機能評価が改善した患者割合(30%以上)などのアウトカム評価指標を用いて加算を与えるというものであった。

■回復期リハとアウトカム評価の導入

では今回導入された回復期リハのアウトカム評価について見ていこう。中医協の議論では「一部の病院ではリハビリの効果も考えずに、多くの入院患者にリハビリを過度に提供している」ことが問題視された。実際に調査してみると、先述したように回復期リハ病棟で、入院患者の9割以上に1日平均6単位を超えるリハを実施している病棟が2割以上もあった。

この状況を是正する意図も込められた、2016年診療報酬改定で導入された回復期リハのアウトカム評価は以下のようなものとなった。回復期リハ病棟では、リハによる改善実績(FIM利得)が一定水準を下回る場合は、6点を超えるリハ点数が包括化されるなど、アウトカムに応じた回復期リハ評価が行われることとなった。

現行では疾患別リハビリは、患者1人1日当たり9単位まで出来高算定できる。しかし、改定後は、質の高いリハを推進する観点から、①1人当たりの1日リハビリ提供単位数、②1入院当たりの平均的なADLの伸び(FIMで計測)-を3カ月ごとに集計し、2回連続して一定水準に達しないと、6単位を超えたリハビリテーションは入院料に包括されることになった(図表3)

図表3 質の高いリハビリテーションの評価201610_18_01.jpg

なお、一般的にリハビリの効果が出にくい、高齢者や認知症患者など一定の患者はアウトカム評価の対象から除外される。FIMの評価項目を図表4に示す。FIMとは機能的自立度評価表(Functional Independence Measure)のことで、1983年にGrangerらによって開発されたADL評価法である。特に介護負担度の評価が可能であり、数あるADL評価法の中でも、最も信頼性と妥当性があると言われ、リハビリの分野などで幅広く活用されている。

図表4201610_18_02.png

■医療のリハから介護のリハへの移行

さて今回、医療によるリハから介護によるリハへの円滑な移行を図るために、「目標設定等支援・管理料」が新たな評価項目として導入された。次はこの背景について見ていこう。

回復期リハに疾患別リハが導入された2006年、同時に「長期間における効果が明確でないリハビリテーション」との指摘から、疾患毎に算定日数上限を設定する疾患別リハと算定日数上限が導入された。これによって脳血管疾患等リハは上限180日、心大血管リハは150日、運動器リハは150日、呼吸器リハは90日のように算定日数の上限が設定された。

これに対して障害者団体や福祉・医療関係者らが「生活力の低下や要介護度の重度化を招く」と大反発がおこり、マスコミも「リハビリ難民」と大々的にキャンペーンを張った。従来は医療保険でカバーしてきたリハビリだが、日数を過ぎて維持期に移行すれば介護保険でカバーすべきというのが厚労省の考え方であった。しかし、改定のたびに「医療保険での維持期リハビリには一定のニーズがあり、介護保険への移行が難しい」という議論が起こり、医療保険によるリハから維持期の介護保険のリハへの移行が進まなかった。

しかし、このような現状を放置していても、医療費の逼迫は進むばかりである。。このため今回は一定の区切りをつけるために、要介護被保険者の医療保険のリハについては「目標設定等支援・管理料」を新たに導入した。具体的には疾病別リハを実施している要介護被保険者等に対して、3か月に1回の頻度で、目標設定等支援・管理シート(図表5)を作成させ、患者又は家族等に説明した上で疾病別リハを算定することとした。説明内容にはこれまでの経過、ADL評価、機能予後の見通し、どのような形で社会復帰できるかというリハの目標設定などが含まれている。この目標設定等支援・管理シートの作成がない場合は、当該疾病別リハを減額することとした。

図表5201610_18_03.png

■生活機能全般を向上させるための維持期・生活期リハ

最後となったが維持期・生活期リハについて2015年介護報酬改定から見ていこう。2015年介護報酬改定での介護リハのトピックスは、「活動と参加に焦点を当てたリハビリの推進」であった。リハの理念を踏まえた「心身機能」、「活動」、「参加」に焦点を当てた新たな報酬体系の導入を図った。

この背景にはこれまでの地域の高齢者リハが「身体機能に偏ったリハ」であることへの批判がある。厚生労働省の「高齢者の地域におけるリハビリテーションの新たなあり方検討会」 では、「利用者の多様なニーズにもかかわらず、通所リハ、訪問リハでは、医療におけるリハビリにおいて主に実施されているような、身体機能に偏ったリハビリが実施されがちである」また「活動や参加などの生活機能全般を向上させるためのリハの実施度合が低く、介護におけるリハとしてのバランスのとれた構成となっていない」といった指摘がなされた。

では、「活動」と「参加」とは、いったい何であるのかを改めて考えてみよう。

それには本来のリハビリテーションの理念に立ち返る必要がある。リハビリテーションの語源はラテン語の「再び(re-)適した状態にする(habilitate)こと」に由来する。そして中世においては教会から破門された者が許されて 名誉と権利を回復することをも意味した。

つまり、リハビリテーションの目的は、心身に障害を持つ人々の全人間的復権を理念として、単なる機能回復訓練ではなく、潜在する能力を最大限に発揮させ、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を可能にし、その自立を促すものである。

この目的に立ち返るならば、生活機能のステップを図表6のように経ていくことが重要となる。最初は機能回復訓練、次いでADLや機能的ADL向上をめざす活動へのアプローチ、そして、さらに地域における役割の創出や社会参加の実現に向けたアプローチと続く。

たとえば脳梗塞で右麻痺の主婦を例に考えてみよう。発病直後は右片麻痺と筋力低下の機能訓練から始まり、歩行訓練から歩行補助具を用いた実用歩行訓練、そして家事訓練へと進む。そして在宅復帰し、利用者が本当に望んでいる「在宅で主婦としての役割」を果たせること、すなわち家庭の中での役割を取り戻すまでに至るのがリハビリテーションの究極の目標である。

図表6201610_18_04.png

■おわりに

以上、2015年介護報酬改定、2016年診療報酬改定におけるリハのトピックスを見てきた。では2018年への診療報酬・介護報酬の同時改定へ向けてリハはどの方向へ進むのだろうか?

まず急性期病棟リハのさらなる強化が必要だろう。急性期の発症直後のリハが患者予後を決める。また回復期リハビリにおけるアウトカム評価の実態調査後に、必要に応じたさらなる厳正化が必要だ。

回復期リハは今後とも絞り込みの方向が続くと思われる。同時に地域包括ケア病棟におけるリハの在り方についても実態調査を含めて、検討を進めていくべきだ。その際には、診療報酬によるリハから、どのように維持期・生活期の介護報酬によるリハへと円滑に移行するかが大きな課題となるだろう。

維持期・生活期のリハの在り方については、この機会に今一度「地域包括ケアシステム」の視点から振り返り、整理した上で、「地域包括ケアシステム」全体として「リハの新たなビジョン」を打ち出していってはどうだろうか?

もちろん、「地域包括ケアシステム」の中核を務める訪問看護の役割は大きい。訪問看護ステーションとしても、維持期・生活期のリハをどのように提供していくのか、主体的に提起していく時代が来ている。