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訪問看護の未来

連載コラム23:病院の退院支援体制と訪問看護(前編)

■はじめに

地域包括ケアシステムとは、一言でいえば「住まいを中心として、そこに暮らす高齢者に医療・介護・予防・生活支援をパッケージで提供するシステム」といえる。この地域包括ケアシステムの中核をなすのが「住宅」である。住宅の場なくして地域包括ケアを利用者に送り厚労省は、団塊世代が後期高齢者となる2025年を前に、「ときどき入院、ほぼ在宅」の方針を打ち出している。こうした方針に沿って在宅へと誘導する診療報酬の改定もあって、今、病院では退院支援の仕組みづくりが、急ピッチで構築されている。

2016年7月、新潟市で全国の国立大学付属病院の連携関係者の全国連絡会、「第13回国立大学医療連携・退院支援関連部門連絡協議会」が開かれた。そのとき話題の中心になったのが、4月診療報酬改定で病院に新設された「退院支援加算1」だった。

「退院支援加算1」はこれからの病院における退院支援体制の標準となる体制と言われている。このため全国の病院が今、その取得を目指して準備を進めている。ただその取得のための要件ハードルがすこぶる高い。とくに2病棟に一人、看護師かソーシャルワーカーの退院支援要員を配置しなければならない。こうした人員要件もあって先の国立大学付属病院、全国43病院の中でも退院支援加算を取得している数はまだ少ない。

今回は病院における在宅への退院支援体制と訪問看護の関係について見ていこう。

■病院における地域連携に係る診療報酬改定の変遷

では、改めて今回の改定に至るまでの、病院における地域との連携体制や退院支援体制における診療報酬の仕組みについて振り返ってみよう。

病院における地域連携に関する項目が、本格的に診療報酬へと導入されたのは、2000年の報酬改定の「急性期入院加算」、「急性期特定入院加算」からだ。この二つの加算は、「急性期医療の実施体制や地域との連携体制の指標」として紹介率(30%以上)と平均在院日数(17日以内)、診療録管理体制などを要件としたものだった。

この加算に全国の地域中核病院が「近未来の急性期病院像」を予感して、一斉に飛びついた。紹介率を上げるために病院に地域連携室が次々に立ち上がったのもこの加算のおかげだ。また紹介率を上げるために連携室の職員が近隣の診療所や病院に営業回りをしたり、自院の患者の積極的な逆紹介に取り組んだりと、まさしく「地域連携フィーバー」が起きた。

ところが、この加算が2006年改定で突如、廃止されてしまう。当時の戸惑いは今でも覚えている。「急性期特定入院加算を取るために、紹介率向上努力をして、取れる寸前まで来ていたのに・・・」と病院関係者の恨み節が聞こえてきた。ただ紹介率、逆紹介率の要件は診療報酬上では消えたが、大学付属病院などの特定機能病院や地域支援病院の施設要件の中には今でも残っている。

さて診療報酬上の紹介率は消えたが、同時に2006年改定で、新たに連携評価項目として導入されたのが、「地域連携クリティカルパス(以下、連携パス)」に係る「地域連携診療計画管理料」であった。連携パスは院内で使われていた疾患別の診療計画表であるクリティカルパスを連携病院間に拡張したものだ。

連携パスの始まりは、もともと連携先進地の熊本市で始まった大腿骨頸部骨折の連携パスからだった。当時、熊本市では大腿骨頸部骨折を手術する急性期病院とそのリハビリを行う後方病院の間で、連携パスを導入していた。この導入の効果を見たところ、導入後に急性期病院の在院日数と後方病院の在院日数が、共に短縮したことが明らかになった。このことが連携パスを診療報酬に収載するきっかけとなった。そしてその後、連携パスの地域連携診療計画管理料は大腿骨頸部骨折に次いで、2008年に脳卒中に導入され、さらに2010年にはがんに導入されることになった。

以上のように紹介率や平均在院日数から始まった連携評価は、疾病別の連携パスによる評価へと変化してきた。そしてこの地域連携の評価という方向性から、2008年には「退院調整加算」として後方連携へと大きくカジを切ることとなる。この流れから、2000年来患者紹介率向上の前方連携に努めていた病院は、退院調整など後方連携にも注力するようになる。

さて、院内でもともと後方連携を行ってきたのは医療福祉部や患者相談室のケースワーカーだった。このためこの時期から前方連携の地域連携室と後方連携の医療福祉部を統合して大部屋化する動きも見られるようになった。そして冒頭に述べたように、今回の2016年改定で、病院の退院支援体制を評価する退院支援加算が新設されることになった。図表1にこれまでの経緯をまとめた。

図表1201701_23_01.png

■入院医療分科会での議論

さて、ここからは連携パスをはじめとした診療報酬における連携評価を議論した、2015年7月1日の中医協の入院医療等の調査・評価分科会(以下、入院医療分科会、座長、著者)の議論を振り返ってみよう。

2016年改定における7対1入院基本料や地域連携については入院医療分科会が担当した。入院医療分科会の役割は、2014年改定の影響調査を行った上で、2016年改定へ向けて7対1入院基本料や地域連携に関する課題を整理し、中医協入院基本問題小委員会に報告を行うことである。

2016年改定へ向かう入院医療分科会の軌跡は、2014年内に2014年改定の影響調査を終え、その結果を受けた会議を2015年4月から月2回ペースで9月まで合計10回重ねるというものだった。そうした会議のさなかの2015年7月1日、この日の入院医療分科会において地域連携に関する評価項目についての集中審議を行った。

7月1日の集中審議では、まず、厚労省事務局からの資料説明があった。この中でこれまでの地域連携に関わる診療報酬上の算定実績の評価が示された。これによると総合評価加算、退院調整加算、介護支援連携指導料については算定実績があるが、連携パスの加算である地域連携診療計画管理料については算定事績が極めて少ないことが明らかにされた(図表2)。

図表2201701_23_02.png

なお、「総合評価加算」とは、高齢患者の基本的な日常生活能力、認知機能。意欲、退院リスクなどについて、医師、看護師、リハビリセラピスト、ケースワーカーなどの多職種チームが総合的に評価を行った場合に、入院中1回に限り算定することができる項目である。入院当初から退院後にどのような生活を送るかということを念頭に置いた医療を行うことで、円滑な退院に繋げることが目的である。

次に「退院調整加算」とは以下の要件を満たした場合に加算として得られる。①入院後7日以内に退院困難な患者を抽出、②退院支援計画書の作成、③計画書を患者・家族に説明・交付(カルテ貼付)、④計画に基づき共同でカンファレンスを行う、⑤当該計画に基づき退院した場合、といった要件となる。また人員要件としては、退院調整に係る十分な経験を有する専従の看護師又は専従の社会福祉士が配置されていることが必要だ。

「介護支援連携指導料」とは、入院中の患者について退院の見込みがついた段階で、入院中の医療機関の医師または医師の指示を受けた看護師等がケアマネージャーと共同で、患者に対し、介護サービスの必要性等について指導を行うとともに、退院後の介護サービスに係る必要な情報共有を行った場合に点数がつくものだ。

上記の算定実績が伸びた一方で、残念なことに連携パスに係る加算である「地域連携診療計画管理料」はあまり算定実績が伸びなかった。これにより事務局側からは、地域連携診療計画料を上記の退院調整加算に含めてはどうかという提案が上がった。

この他、当日の入院医療分科会では、病棟に専任又は専従の退院支援の職員を配置した効果として「より早期に退院調整を行う患者抽出を行えるようになった」、「より多くの患者に対して退院支援を行えるようになった」などの調査結果も示された。また、早期退院へ向けて多職種カンファレンスを実施している医療機関の方が、より在院日数が短いという調査結果も示された。

上記のような調査結果について入院医療分科会の委員からは、「病棟への専従者の配置が在宅復帰に効果的」という意見や、「しかし専従者の配置は人員的に困難だ」との意見、「連携の評価はストラクチャーではなく在院日数や在宅復帰率などのアウトカムで評価すべきだ」という意見が出された。

こうした議論が、その後中医協総会でも再度行われ、結果として従来の退院調整加算に地域連携パスの加算を含めた上で施設要件を強化した「退院支援加算」が新設されることになった(図表3)。

図表3201701_23_03.png

ここまでは、病院における地域連携に係る診療報酬改定の変遷と、そこから現在の退院支援加算が誕生するきっかけとなった入院医療分科会での議論について追ってきた。次回はそこから生まれた「退院支援加算1」を詳しく解説するとともに、病院が担う退院後の在宅療養支援と訪問看護との係りについて詳しくご紹介しよう。