連載コラム24:病院の退院支援体制と訪問看護(後編)

連載コラム24:病院の退院支援体制と訪問看護(後編)

国際医療福祉大学大学院
武藤 正樹(むとう まさき)

1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了、医学博士。国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年~1988年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。 1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長、1990年国立療養所村松病院副院長、1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長、1995年国立長野病院副院長、2006年国際医療福祉大学三田病院副院長、国際医療福祉総合研究所長、2009年より現職。


連載コラム24:病院の退院支援体制と訪問看護(後編)

■退院支援加算1

前回から病院の退院支援体制について解説している。現在の医療政策を語る上で、病院から在宅へと医療の中心をシフトすべく、診療報酬を含めた制度の改革・整備が進められていることは周知の事実であるが、そうした病院から在宅へ向かう医療政策を象徴するものの一つが退院支援である。

前回はその退院支援をめぐる背景を追ってきた。まず、現在の退院支援制度に至るまでの病院における地域連携に係る診療報酬改定の変遷をご紹介した。その上で、現在の「退院支援加算1」が誕生するきっかけとなった2015年7月1日の入院医療分科会について振り返った。どのような歴史と議論から「退院支援加算1」が生まれたのか、ご理解いただけたと思う。

今回は、その「退院支援加算1」の要件、そして、患者の退院後に病院が行う在宅療養支援と訪問看護の係りについて詳しくお話ししよう。

さて、前回既に述べているように、新設された「退院支援加算1」は、従来の退院調整加算の要件をもとに、以下のような要件強化の上で新設された。

退院支援加算1は退院時1回につき、一般病棟で600点である。算定要件は、①3日以内に退院困難な患者を抽出、②7日以内に患者・家族と面談、③7日以内に多職種によるカンファレンスの実施、④退院調整部門(看護師又は社会福祉士による専従者1名)の設置、⑤2病棟に1名以上の退院支援業務等に専任する職員を配置、⑥連携する医療機関等(20か所以上)の職員と定期的な面会を実施(年3回以上)、⑦介護支援専門員との連携実績など。

上記の要件のうち最も高いハードルは、先述したように、やはりその人員配置要件である。特に⑤の2病棟ごとに1名以上の看護師あるいは社会福祉士(ソーシャルワーカー)の専任配置要件は、病棟数の多い、大学付属病院等ではハードルが高く、冒頭に述べた国立大学付属病院43病院の内でも退院支援加算1を取得しているのはまだ数病院にすぎない。ただし、病棟業務の整理や役割分担の見直しで専任配置をわずかな人員増で押さえて実現している大病院もある。

また、要件の中での医療機関間の顔の見える連携の構築で、「20か所以上の連携する医療機関等の職員と年3回以上の面会を実施」もハードルが高い。ただ、これは退院支援加算1を取得しているある大学病院によれば「地域連携パス会議のあとグループワークを実施して、そこで病院間の担当者同士、個別面談を行うことでクリアできる」とのことだ。その他、「介護支援連携指導料」の算定についても、ケアマネージャーの来棟機会を捉えて小まめに算定する必要があるとの声が聞かれる。
図表4に退院支援加算の要件をまとめたものを示す。

図表4

■退院直後の在宅療養支援

2016年4月の診療報酬改定では、退院直後の病棟から行う在宅療養支援が評価されるようになった。これは悪性腫瘍の患者さんや、人工呼吸器や中心静脈栄養など各種デバイスを装着して退院する患者さん、中重度の認知症患者さんなどに対して、退院後1カ月間に病棟から5回までの訪問を行うことを診療報酬上で評価したものだ。この間に訪問看護師と連携して在宅療養に必要なケア技術を移転する。こうして在宅療養への円滑な移行を促して、在院日数短縮化と再入院予防を図るというのが国の狙いだ。

この仕組みが特に有効に機能するのではと期待されている分野が、重症小児の在宅療養だ。重症小児に対応できる訪問看護がまだまだ少ない中、NICU(新生児集中治療室)を退院する児の在宅での受け皿整備において、この仕組みへの期待は大きい。

在宅療養を充実させる上で、機能強化型訪問看護ステーションの整備が重要であることはもちろんだ。だが、在宅看護における病院と訪問看護ステーションの機能分担と連携という考え方も今後、必要になるであろう(図表5)。

訪問看護師の確保が課題となっている一方で、既に病院の看護師や医療機関併設型の訪問看護ステーションから訪問看護師が在宅に積極的に出向いて、看取りを行っている地域もあるため、病院と訪問看護ステーションがお互いの長所を活かし、地域の実情に沿った連携を行うことが求められている。
そうした連携の際に、病院側の重要なセクションとなるのは、前述の退院支援の専任担当であることは言うまでもない。

図表5

■訪問看護ステーションからのアプローチ

在宅療養のもう一方のキーとなる訪問看護ステーションからも、病院の退院支援体制への関心が高まっている。訪問看護ステーションにとって病院は連携先、もっと踏み込んで言うならば”営業先”であり、退院支援を行う担当はその窓口であるからだ。

もちろん、単に患者が紹介され、そのケアを引き継ぐだけの関係ではない。できる限りシームレスな引継ぎが、適切なケアの観点からも患者のQOLの観点からも望まれる上に、患者の容態が悪化した場合には再び病院へと戻る可能性もあるからだ。訪問看護師以外に、ケアマネージャーはもちろんのこと、その他の介護サービスの関係者も含めた十分な連携体制の構築が重要となる。

著者が定期的に研修を開催しているインキュベクス株式会社の支援先訪問看護ステーションも、こうした病院の退院支援担当との連携への関心が高い。著者が副院長として勤めていた国際医療福祉大学三田病院の地域医療連携室へと、インキュベクスの支援先訪問看護ステーションの方が見学に訪れたこともある。見学会の中でもやはり、病院、訪問看護ステーション双方への期待の大きさと連携の重要性が参加者の言葉として表れていた。

■おわりに

さて、病院の地域連携に係る診療報酬体系の見直しと、2016年に新設された退院支援加算1や退院直後の在宅療養支援について振り返ってきた。

これからは病院と訪問看護ステーションとの連携が重要だ。病院との連携はまずケアマネージャーとの連携を通して患者の退院時ケアカンファレンスに参加すること、そして現在は診療報酬では認められていないが、ケアマネージャーのように病棟に直接出向き、病棟看護師と患者について入院中から患者の情報共有を行うことが円滑な退院につながる。

病院の退院支援の体制は間もなく「退院支援加算1」で示された退院支援体制が完備されるであろう。これからはこうした病院の動きに合わせて訪問看護ステーションも病院との連携づくりに努めるべきだろう。

参考文献

①中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織「平成27年度第4回入院医療等の調査・評価分科会」資料(2015年7月1日)厚生労働省ホームページ
HP(閲覧日2016年8月17日)

②中央社会保険医療協議会 総会(第328回)資料(2016年2月10日)厚生労働省ホームページ
HP(閲覧日2016年8月17日)

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