連載コラム25:24時間定期巡回・随時対応サービスと訪問看護(前編)

連載コラム25:24時間定期巡回・随時対応サービスと訪問看護(前編)

国際医療福祉大学大学院
武藤 正樹(むとう まさき)

1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了、医学博士。国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年~1988年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。 1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長、1990年国立療養所村松病院副院長、1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長、1995年国立長野病院副院長、2006年国際医療福祉大学三田病院副院長、国際医療福祉総合研究所長、2009年より現職。


連載コラム25:24時間定期巡回・随時対応サービスと訪問看護
(前編)

■はじめに

以前、この連載コラムの19、20で看護小規模多機能型居宅介護、略称「看多機(かんたき)」について取り上げた。

看多機は「泊まり」「通い」「訪問」の3つのサービスを1つの事業所がフレキシブルに組み合わせて、利用者の在宅療養を支援するサービスだ。看多機は「在宅は初めからムリ、あるいはこれ以上の在宅はムリ」と言う利用者やその家族のいわゆる「在宅医療の限界点」を引き上げる仕組みとして期待されている。

今回は、こうした在宅医療の限界点を引き上げるためのもう一つの仕組みである、「24時間定期巡回・随時対応サービス」(以下、「24時間サービス」)について見て行こう。実は看多機も24時間サービスも2012年4月の介護報酬改定で導入された新サービスで、まだ始まって6年にもならない成長途上のサービスだ。

しかし、この2つのサービスのいずれにも訪問看護ステーションが深く関わっている。前回見たように看多機は訪問看護の力がなければ成り立たない。同様に24時間サービスの運営でも訪問看護が決め手となる。今回はこの24時間サービスが誕生した経緯と訪問看護との関わりについて見て行こう。

■24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会

この24時間サービスの基本コンセプトは、2011年2月に公表された「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」(座長さわやか福祉財団理事長、堀田力、以下「検討会」)の報告書がもとになっている。

まず、この報告書を振り返って見よう。この検討会では24時間サービスの基本コンセプトを以下のように提案している。

①1日複数回の定期訪問と継続的アセスメントを前提としたサービス。
②短時間ケア等、時間に制約されない柔軟なサービス提供。
③随時の対応を加えた安心サービス。
④24時間対応。
⑤介護サービスと看護サービスの一体的提供。(図表1)

つまり、24時間サービスは、訪問介護と訪問看護が一体的、または密接に連携しながら、短時間の定期巡回型の訪問を行うこと、そして利用者からの電話コール等を通じて、随時、利用者ニーズに対応することに特徴があると言える。

図表1

「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」報告書より

24時間サービスの基本的な利用者像は、検討会では要介護3以上の要介護者の在宅生活の限界点を引き上げるというのを眼目としつつも、要介護1、2であっても、必要性が認められれば対象者とするということで、要介護者全般という形でまとめられている。

さらに詳しい利用者像として、独居、認知症など不安定要素の大きい要介護者、比較的病状が安定して要介護状態が中重度の高齢者および医療処置を必要とする高齢者、ターミナル期の要介護者、退院直後の要介護者などが挙げられている。

また、このサービスのマネジメントのあり方については、報告書では、介護職員あるいは介護職員によるチームが行う継続的なアセスメントに基づいて決定していくということ、そしてケアマネジャーとの関係については訪問介護サービスを行う事業所とケアマネジャーとの「共同マネジメント」というような形で緊密に連携を図っていくことが必要と述べている。

■24時間サービスと看護職の役割

続いて報告書では、以下のように24時間サービスの運営のポイントについて述べている。まず、上記の基本コンセプトの「介護サービスと看護サービスの一体的提供」については、看護職員の役割が以下のように挙げられている。

①「利用者に対する定期的なモニタリング・アセスメント」。
②「訪問看護指示書によるサービス提供」。
③「体調急変時の判断や医師との連携」。
④「介護職員に対する療養上の助言等を行う」。

こうした役割を看護職が果たすことが求められている。

さらに看護職については、看護職員、介護職員をその事業所に配置する、あるいは外部の訪問看護サービスと密接な連携を行うというような形を求めている。「職員配置のあり方」については、常勤職員の雇用を進め、勤務ローテーションを安定化することが基本になる。短時間勤務の職員を組み合わせたシフト対応、あるいは兼務等についても柔軟に対応できる仕組みなどの必要性についても報告書は述べている。

なお、報告書は「随時の対応のための職員配置」についても、次のように述べている。利用者からのコールに対応する職員であるオペレーターは、一定の知見と実務経験を有するものが必要といったことや、事業所間の連携、委託方式など多様な地域資源、インフラの活用が必要であること、双方向通信が可能な情報通信技術の活用が必要であることといった指摘がなされている。

■24時間サービスの提供圏域、報酬体系

では、24時間サービスのサービス提供圏域は、どのくらいの広さとなるのだろう?

報告書では、利用者の立場から見れば、「すぐにできるだけ早く来てもらいたい」といったニーズに触れる一方、事業者の立場としても「移動時間の短縮が効率的な経営、運営につながる」と、近い距離にあることが望ましいとしている。こうしたことから報告書では、24時間サービスのサービス提供は、「駆け付け30分」の日

常生活圏域内が基本になると述べている。つまり、24時間サービスは地域密着型サービスとすることがふさわしいと言える。

その「報酬体系のあり方」についてはどうだろうか?

報告書では「報酬体系のあり方」について、「高齢者の生活においては、心身の状態が日々変化しそれにともない必要なサービスの量やタイミングも変化することから、施設と同様、包括定額払い方式の介護報酬を基本とすべきである」と述べている。

また、「本サービスの事業者、従業員に与える効果」については、従来に訪問看護に比べて利用者一人への訪問回数が増え、また、利用者の生活を包括的かつ継続的に支える形へと変わることから、職員の稼働率の向上、常勤職員の雇用機会の増加、専門性の向上、やりがいの醸成、チームケアの概念の強化などのメリットがあるのではないかと、報告書は述べている。

■24時間サービスの事業シミュレーション

報告書では、24時間サービスの事業モデルのシミュレーションを行っている。シミュレーションはどれくらいの利用者にどのくらいの職員で対応できるかを推計したものだ。

まず「総人口10万人単位の圏域」を想定する。この人口10万人の中の高齢者人口、高齢化率、あるいは要介護認定率、それから訪問介護を使っている人がどれくらいいるのかを推計する。そして訪問介護を使っている人の中で1か月のうち20日ぐらい訪問介護を使っている人、すなわち頻回利用者がどれくらいいるかを推計した。すると人口10万人圏域で225人ぐらいいることが判った。

この225人の利用者を5つの事業者がカバーするという前提に立つと、1つの事業者当たり45人の利用者というイメージが得られる。この45人の利用者に対して、一定の前提を置き、総ケア時間、移動の時間等々を加味して、職員がどれぐらい必要かということを推計した。これによると常勤換算で介護職員22.8人、看護職員1.71人、面接相談員1.0人、オペレーター常時1人という形での1つのモデルが出来上がった。

ただ、シミュレーションに当たっては、いろんな運用の仕方を前提とした。たとえばオペレーターの機能については、複数の事業所で共有するとか、夜勤職員については例えば、夜間も対応しているような施設の職員との兼務をするとか、いろんな柔軟な職員体制の組み方というのは当然あるという前提のもとでシミュレーションを行った。

■定時巡回・随時対応型訪問介護看護の創設

以上の「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」報告書や同時に行われた後述するモデル事業の結果を基にして、社会保障審議会介護保険部会の審議が行われ、本サービスは2012年4月の介護報酬改定において創設されることになり、その正式名称も「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」(以下も「24時間サービス」とする)となった。

図表2に新たに創設された24時間サービスのイメージ図を示す。24時間サービスは地域密着型サービスの一類型として創設された。対象者は要介護者のみに限定し、以下の4つの機能を有している。①定期巡回サービス、②随時対応サービス、③随時訪問サービス、④訪問看護サービス。以下にその詳細を記す。

①定期巡回サービス

訪問介護員等が定期的(原則、1日複数回)に利用者の居宅を巡回して日常生活上の世話を行う。

②随時対応サービス

あらかじめ利用者の心身の状況、その置かれている環境等を把握した上で、随時、利用者又はその家族等からの通報を受け、通報内容等を基に相談援助を行う、または訪問介護員等の訪問、若しくは看護師当による対応の要否を判断するサービス。

③随時訪問サービス

随時対応サービスにおける訪問の要否等の判断に基づき、訪問介護員等が利用者の居宅を訪問して日常生活上の世話を行う。なお通報があってから概ね30分以内の間に駆け付けられるような体制確保に努めることが必要。

④訪問看護サービス

看護師等が医師の指示に基づき、利用者の居宅を訪問して行う療養上の世話又は必要な診療の補助を行うまた療養上の世話又は診療の補助の必要でない利用者であっても、概ね1月に1回はアセスメントのため看護職員が訪問する。

図表3に以上のサービスの日割り表を示す。

図表2

図表3 24時間サービスの日割り表

「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」報告書より

以上のように、今回は、24時間定期巡回・随時対応サービスについて、それが誕生した検討会から振り返って見てきた。その内容や、2012年に24時間サービスが創設された際の4つの機能までを紹介した。

次回は、24時間サービスの現状と課題、そして訪問看護との係りなどをご紹介しよう。

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