連載コラム26:24時間定期巡回・随時対応サービスと訪問看護(後編)

連載コラム26:24時間定期巡回・随時対応サービスと訪問看護(後編)

国際医療福祉大学大学院
武藤 正樹(むとう まさき)

1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了、医学博士。国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年~1988年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。 1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長、1990年国立療養所村松病院副院長、1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長、1995年国立長野病院副院長、2006年国際医療福祉大学三田病院副院長、国際医療福祉総合研究所長、2009年より現職。


連載コラム26:24時間定期巡回・随時対応サービスと訪問看護
(後編)

■新設された24時間サービスの運用体制および介護報酬

前回から、24時間定期巡回・随時対応サービスについてご紹介している。前回は24時間サービスの登場に至った背景と、その内容をご紹介した。

今回はその続きで、まず運用形態についてご説明した後、現状とその効果、課題、訪問看護との係りについて追っていく。

それでは24時間サービスの運用について見て行こう。まず、その事業所体制には以下の2類型が定義されている。(図表4)

①一体型事業所: 一つの事業所で訪問介護と訪問看護のサービスを一体的に提供する類型
②連携型事業所: 事業所が地域の訪問看護事業所と連携をしてサービス提供する類型
いずれにおいても医師の指示に基づく看護サービスを必要としない利用者が含まれている。

図表4

また、そうした事業所の人員体制については、設置基準(図表5)や介護報酬体系(図表6)も定められた。
図表5

図表6

■24時間サービスの現状

2012年4月にスタートした24時間サービスであるが、その現状を見て行こう。

スタートして2年後の2016年9月末には実施保険者数は386自治体、908事業所で、その内訳は一体型が351、連携型557であった。事業所が多い都市は、やはり政令都市、人口10万人~30万人の大都市が中心となる傾向にある。

次に24時間サービスの実情について、2012年4月に新サービスがスタートする前に行われたモデル事業の調査結果からその現状を見て行こう。

調査は2011年度厚生労働省老人保健健康増進等事業で行われたものだ。調査の結果、モデル事業を実施した52自治体で1084名の利用者がいた。その平均要介護度は3.0であり、独居または高齢者世帯が全体の66.6%を占めていた。圏域は平均移動時間が15.7分であり、1日あたりの平均訪問回数は2.6回、1回当たりのサービス提供時間は20分未満が32.3%、20分未満の定期巡回訪問では、排せつ介助(食事準備、服薬管理)の他、安否確認や見守りなど多様なサービスが提供されていた。

(図表7)
図表7

厚生労働省老人保健健康増進等事業「24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問サービスのあり方に関する調査研究事業」(2011年)より
その利用者のうち、31.0%は訪問看護サービスを利用していた。訪問看護は平均ケア提供時間が50.1分であるが、身体介護も組み合わせて提供を行っていた。

また訪問全体の74.1%が日中に行われたものであった。そしてコールがあったケースのうち、実際に訪問を必要とするものは31.8%であり、深夜・早朝のコールの多くは利用者の不安によるもので訪問を要しなかったものが多かった。

こうした24時間サービスの効果として挙げられたのは、定期的な訪問により利用者の生活にリズムが生まれ、また利用者や家族の安心にもつながったこと。さらに病院からの退院直後や一時的に状態が不安定な時期に、集中的なケアを行うことで在宅生活の安定につながることも明らかになった。

■24時間サービスによる具体的な改善事例

モデル事業の検証から、以下の利用者の具体的な改善事例が明らかになった。

〇排せつ改善事例

以前は失禁後の排泄解除を行っていたが、起床時、日中、夕方、就寝時の排泄のタイミングで短時間訪問を実施することで、失禁も減り、日常生活動作(ADL)も改善した。

〇ADL回復事例

一時的にADLが低下し、在宅継続が困難になった利用者に対して、短時間複数回の訪問で簡単なリハビリを組み合わせた介護を行うことで、一時的に低下していたADLが回復し、在宅継続が可能になった。短期集中的に訪問することで効果があった。

〇定期訪問で生活のリズムが回復

服薬や食事摂取、水分補給を確実にすることが必要な一人暮らしの認知症高齢者に対して、複数会訪問により服薬、食事摂取、水分補給を確実に確認できるようになった。また食事ごとの訪問により生活のリズムを作ることができるようになった。

〇周辺症状が落ち着いた認知症事例

認知症の周辺症状が出てきた人、既存の訪問介護では在宅継続が困難であったが、短時間定期的な訪問が入ることで周辺症状も落ち着き生活に対する意欲が出てきた。また以前は職員に対して拒否があったが複数回訪問することで信頼関係が築かれ拒否がなくなった。

〇温度管理や水分補給などを支援し、体調が改善した事例

精神疾患があり温度管理が出来ず見守りが必要な利用者に、短時間複数回訪問することで夏場の室温管理等も行うことができ、精神状態の波があったがかなり落ち着いた。

〇円滑な在宅復帰を支援できた事例

施設や医療機関から在宅復帰する際に、生活環境への適応などに時間を要する場合が多い。短期間に集中的にかつ柔軟に回数やタイミングを調整して訪問することで、徐々に在宅生活に移行できるというメリットがあった。

■24時間サービスの課題

ここからは、上記の調査の翌年に行われた、2012年度厚生労働省老人保健健康増進等事業の調査をもとに、24時間サービスの課題について見て行こう。

この調査は、2012年に24時間サービスがスタートした直後、参入している事業所とまだ参入していない事業所についてアンケート調査を行ったものだ。24時間サービスのイメージについて、未参入事業所と参入事業所の両者に訪ねて、それを比較し、その意識ギャップについて調べた。参入障壁について尋ねる質問に対して、未参入と参入事業所で意識ギャップが認めれた。

まず、体制整備に関する参入障壁については、「夜間、深夜の訪問体制構築」と答えた事業所は未参入事業所が74.6%に対して、参入事業所は17・9%と低かった。(図表8)
図表8

また、利用者像についての質問でも未参入と参入の事業者で差が見られ、夜間・深夜の利用ニーズがない人は対象者には不向きと未参入事業者の34.7%が答えた一方で、参入事業者でそう答えた割合は2.6%しかなかった。

サービス内容についての質問でも、「夜間、深夜の対応が中心」と答えた未参入事業者が31.3%であったのに対して、参入事業者では1%未満だった。同じくサービス内容について未参入事業者では21%が「利用者からのコール対応が中心」を挙げたが、参入事業者は1%未満だった。(図表9)

図表9

以上のように、未参入事業者とすでに参入している事業者では、24時間サービスについての大きな意識ギャップが、体制整備、対象者イメージ、サービス内容などで発生していることが判った。いずれも参入事業者での割合が下がっているため、実際に事業を行ってみれば「案ずるよりも生むがやすし」ということなのだろう。

■24時間サービスと訪問看護事業所

次に、24時間サービスと訪問看護事業所との係りを見て行こう。

先述したように24時間サービスの事業者形態には「一体型」と「連携型」がある。このうち連携型は訪問看護事業所と連携を行って24時間サービスを行う類型である。

この連携型の課題は以下のようなものだ。まず、連携先の訪問看護事業所の理解を得ることが大変であることが大きい。24時間サービスで訪問看護(介護保険)の利用者は24時間サービス利用者全体の半数にも及ぶ。

ところが、24時間サービスとの連携に理解を示してくれる訪問看護事業所が少ない。「指示書に基づく訪問に関して包括報酬の理解を得ることが難しい」「定期的なアセスメントの実施について委託料の設定が難しい」「24時間サービス全般についての理解を得ることが難しい」といったように、24時間サービス制度そのものの理解が訪問看護ステーション側にまだまだ理解されていないことが、連携を妨げている。

24時間サービスにおける訪問看護ステーションの役割は、予防的な内容が中心となる。しかし、訪問看護ステーション側が自身の役割について、訪問看護指示書を伴う利用者むけと限定的に理解してしまっていることが多いため、24時間サービス事業者が必要としている役割への理解が得られない場合が多いのだ。

その結果、24時間サービスと訪問看護の連携が円滑に行われず、このことがネックになって24時間サービスの普及そのものが妨げられている側面もある。

今後、24時間サービスがさらなる普及を遂げていくためには、訪問看護ステーションによる24時間サービスへの理解を促していくこと、そして、訪問看護事業所自身による24時間サービスへの新規参入を推進することが必要だと言える。

訪問看護ステーションにとっても、24時間サービスへ進出することはメリットにもなる。24時間サービスの報酬は月単位での定額、いわゆる「まるめ」であり、訪問看護と訪問介護の明確な時間区分などはない。そのため、「介護でできる範囲は極力介護で行い、介護と看護の役割分担を徹底する」ことで、効率の良い運営ができる。

ケアの質という意味でも、24時間サービスは効率良く質を高めることができる。看護師から介護職へと専門知識・技術を広めやすい。著者が本コラムを連載しているインキュベクス株式会社の支援先訪問看護ステーションでも、グループ内で積極的に看護師から介護職へと専門分野の教育を行っているケースがあるという。

24時間サービスは、冒頭の通り在宅医療の限界点を引き上げることへの期待が大きい。それは、利用者にとって便利で、効率の良いサービスであるだけでなく、事業者にとっても効率の良いビジネスとなる可能性を持つためである。

24時間サービスが、さらに効率よく、シームレスに多様なサービスを提供できるようになることで、在宅ケアの質はますます高まっていくだろう。

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