連載コラム31:同時改定と医療・介護連携(前編)

連載コラム31:同時改定と医療・介護連携(前編)

国際医療福祉大学大学院
武藤 正樹(むとう まさき)

1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了、医学博士。国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年~1988年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。 1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長、1990年国立療養所村松病院副院長、1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長、1995年国立長野病院副院長、2006年国際医療福祉大学三田病院副院長、国際医療福祉総合研究所長、2009年より現職。


連載コラム31:同時改定と医療・介護連携(前編)

■はじめに

2018年は6年に一度の診療報酬・介護報酬同時改定の年だ。

今年4月以降、この同時改定へ向けて、診療報酬改定を扱う中医協、介護報酬改定を扱う社会保障審議会・介護給付費分科会の議論がともに活発化している。特に同時改定は医療と介護の連携の仕組みを考える上で、またとない機会だ。

しかもこの機会は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年へ向け、医療・介護連携の仕組みづくりを構築する上でのラストチャンスでもある。

こうしたことから、この2017年3月下旬、中医協と介護給付費分科会のメンバーが都内で集まり、「医療と介護の連携に関する意見交換」を行った。

今回はこの意見交換のテーマとなった看取り、訪問看護等における医療と介護の連携の課題について振り返って見よう。

■医療と介護の連携に関する意見交換

意見交換は3月22日、4月19日の両日、都内で開かれた。

さて、医療と介護のサービス提供において、特にその間の連携が求められる局面(フェース)には、以下の4つのフェースがある。

①退院支援、②日常療養支援、③急変時の対応、④看取り。

この4つのフェースを図式化したものが、下記図表1である。

これらは医療と介護のケアサイクルの中で、特に医療・介護が緊密な連携が求められる局面だ。

図表1 医療と介護の連携が求められる4つのフェース

意見交換では、この4つのフェースごとに以下の4つの個別テーマを取り上げることとなった。

①看取り、②訪問看護、③リハビリテーション、④関係者・関係機関の調整・連携。

この個別テーマと各フェースの関係を以下に示す。

図表2

医療と介護の意見交換の4つのテーマとフェースの関係
(1)看取り(④)
・医療機関、介護施設、居宅等における看取りと医療・介護サービス提供の在り方
・要介護被保険者等の状態やニーズに応じた、医療・介護サービスの供給の範囲
(2)訪問看護(①、②、③、④)
・医療機関から在宅への円滑な移行支援に係る訪問看護の提供訂正
・在宅での療養生活を送るための訪問看護の24時間対応や急変時対応
・訪問看護における医療職と介護職との連携
(3)リハビリテーション(①、②)
・医療と介護による継続的なリハビリテーションの提供の在り方
・リハビリテーションにおける医師の指示や実施計画等の在り方
(4)関係者・関係機関の調整・連携(①、②、③、④)
・入退院時、日常療養時及び急変時等における、医療機関と居宅介護支援事業所等の医療・介護を含めたサービス提供者間の連携の在り方
*①、②、③、④はフェース

この個別テーマについて、医療と介護の連携の観点から見て行くことにする。

■看取り

「医療と介護の連携に関する意見交換」では、まず「看取り」が取り上げられた。

地域医療構想の2025年へ向けてのシミュレーションの中で、2025年時点でおよそ30万人の追加的に必要な在宅医療患者が増加することを見込んでいる。

また、2025年の年間総死亡数は154万人と現状より26万人増加する。その中で国民のおよそ6割は「自宅での療養」を望んでいる。しかし、看取りは現状では医療機関で行われるケースが8割を占めているのが現状だ。

これを受け、在宅における看取りを促すために、診療報酬や介護報酬の中で在宅看取りに対する加算が順次整備されてきた。

例えば、診療報酬では在宅患者訪問診療料の在宅ターミナルケア加算や看取り加算など、介護報酬では介護福祉施設サービス費の看取り介護加算、介護保険施設サービス費のターミナルケア加算などがとりあえず整備されてきた。 しかし、現状でもまだまだ看取りに関する課題は多い。これを、①在宅、②介護保険施設、③医療機関等の順に見て行こう。

まず、①の在宅では、「がん以外の患者では看取りの時期予測が困難で、個別ケース対応となるところから看取りへの対応が十分でない」ことが指摘されている。
また、在宅で療養中の患者について、死亡日あるいは死亡前14日以内に2回以上の往診や訪問診療を行い、その患者が在宅で死亡した場合には、在宅患者訪問診療料に「在宅ターミナルケア加算」(機能強化型の在宅療養支援病院では6000点)が取れる。

しかし、在宅療養中の患者が、例えば「医療機関での看取り」を希望していた場合には、訪問診療や往診などを行うかかりつけ医と、入院先医療機関の医師との間で、緊密な情報連携を行っていても、現行の報酬上の評価はなされない。

このため、次期改定においては「結果(在宅での死亡)だけに着目せず、ターミナルケアや看取りの実質的なプロセスも評価していく」方針にしてはどうかという考えが出された。

次に、②特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの介護保険サービス提供を行う施設における看取りについて見て行こう。

こうした介護保険施設での看取りでは、まず看取りそのものを行わない方針の特別養護老人ホームが1割以上もある。また有料老人ホームでは、その負担感から看取りを行なわず、看取りのために病院に利用者を移すという施設もあることが課題だ。

この理由の一つに利用者の死亡時の死亡診断書問題がある。

例えば、特別養護老人ホームの場合、常勤の配置医が少ないため、施設内の死亡に医師が立ち会うことが少ない。

特養が看取りを行わない理由について厚生労働省は、「医師法第20条がネックになっている」との見方を示した。

第20条は医師の診察から24時間以内の死亡について規定した条項で、死亡時に医師の立ち会いがない場合も、死亡後に改めて診察し、生前に診ていた疾患に関連した死と判定できる場合は、死亡診断書を作成できるというのが正しい解釈である。しかし、同時に、診察から24時間を超過しての死亡は、「異状死として警察への届出が必要、担当医が死亡診断書を作成できない」などと誤解されていることも多い。

厚労省は配置医師の約8割が外部の非常勤医師である特養の一部で看取りが行われない背景には、こうした誤った法解釈がある可能性があると指摘した。

残る③医療機関内でも看取りについても課題がある。

医療機関内での看取りでは患者や家族との情報共有の不足から、「延命を望まない」という患者のリビングウイルに沿わない延命が行われている可能性もある。

また、がん診療連携拠点病院以外での緩和ケアの状況が十分に把握されてはいないなどの課題がある。

以上のような課題に対応するため、厚労省保険局医療課の迫井課長は以下の点を検討してはどうかと提案している。

①在宅での看取り
・がん以外の患者の看取り期における医療の関与
・末期がん患者へのサービス提供にあたっての、医療職とケアマネージャーとのさらなる円滑な連携
②介護保険施設での看取り
・特養ホームや居住系サービスが提供すべき医療の範囲
・外部医療機関が特養ホームなどの入所者に提供すべき医療の範囲
③医療機関での看取り
・医療機関での看取りを希望している患者に対する、医療機関も含めた在宅医療の関係者・関係機関間における情報共有、医療機関が提供するべき医療の範囲
・緩和ケアの在り方

■訪問看護ステーションの現状と医療保険・介護保険との関係

次は、訪問看護ステーションについて見て行こう。

まず、訪問看護における医療保険と介護保険との関係はどのようになっているのだろうか?

訪問看護は医療保険と介護保険がモザイク状に入り組んでいるので、医療と介護の関係についての基本から押さえておくことが必要だ。

そもそも訪問看護は、原則として利用者が介護保険対象者である場合は、介護保険の給付が、医療保険の給付に優先することになっている。ただし、末期の悪性腫瘍、難病患者、急性増悪等による主治医の指示があった場合に限り、医療保険の給付対象となる。

このため、現在、医療保険より給付がなされている訪問看護の利用者は17.1万人、介護保険より給付がなされている利用者が39.6万人となっている。(図表3)

図表3

訪問看護ステーションの実施事業所数をみると、訪問看護ステーションはここ5年で1.4倍の伸びとなっている。

2016年度(平成28年度)に医療保険の請求を行った訪問看護ステーションは8613カ所、介護保険の請求を行った訪問看護ステーションは8484カ所となっている。それぞれ別のステーションなのではなく、1つのステーションから医療保険の請求も、介護保険の請求も出されるので、訪問看護ステーションにおいては、どちらの保険もほぼ同じように請求されていることがわかる。

一方、2016年度に医療保険で訪問看護に関する請求を行った病院・診療所は4284カ所であり、介護保険で訪問看護に関する請求を行った病院・診療所の1629カ所との差が大きい。これは病院・診療所が行う訪問看護が医療保険で行う内容に特化してきており、介護保険で行う訪問看護は訪問看護ステーションへと移行していることを示している。(図表4)。

また、病院・診療所が介護保険での訪問看護を行わなくなってきているだけでなく、病院・診療所が訪問看護自体を行わなくなってきている事実もある。これについては、「医療と介護の連携に関する意見交換」で、全日病の猪口委員から「何かあったときに入院・介助もしやすくなる」と、病院・診療所による訪問看護の有用性と、それが減少してしまうことへの懸念が示されている。

加えて、病院・診療所が行う訪問看護については、訪問看護ステーションとの報酬の差の見直しが求められている。
例えば、介護保険では、病院・診療所が行う訪問看護の介護報酬は、訪問看護ステーションの報酬と比べて全体的に低く、30分未満では71単位低い392単位となっている。こうした点数格差の是正を望む声も少なくない。

図表4

今回は、2018年の診療報酬・介護報酬同時改定と、訪問看護における医療と介護の連携について見てきている。

そのために開かれた「医療と介護の連携に関する意見交換」のテーマに沿って解説を進め、話題はちょうど訪問看護の現状と、医療保険・介護保険との関係まで進んだ。ここから先は次回、改めて解説をしていきたい。

次回は、訪問看護における課題を整理し、さらにリハビリテーション、関係者・関係機関の調整・連携へと、同時改定と連携を巡る論を進めていきたい。

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